枝豆と蟻
今日、枝豆をもらった。
まだ葉も茎もついているやつを。
きっと新鮮なんだろう。
取って、両端を少し切って、塩で揉んで。
美味しさに至るまで、様々な工程があるんだなぁ…。
あの、無造作に、ぱくぱくと枝豆を食べ進める姿を想像して、それまでの苦労は全く汲み取られていないなと思った。
ふとシンクを見ると、蟻が1匹歩いていた。
君の運命は、今俺の掌の上にあるんだぞと、よくあるセリフを思い浮かべながら様子を見ていると、逃げるべき場所で、シンクに散りばめられた塩に夢中になっている。
俺がここで水を流せば、きっと、この蟻は蟻でなくなるんだと思う。
何だか忍びないので、指を伸ばしたら素直に登って来た。
外の土の部分へ返したけど、あの蟻は元の巣へ戻れるんだろうか。
多分、フェロモンか何かを辿って、きっと仲間の元へ向かったんだろう。
何だか、枝豆がより美味しく感じた。